ZENAIM INSIDE STORYは、ゲーミングギアブランド『ZENAIM』に携わるプロジェクトメンバーを通して、ブランドの魅力を伝えるコラム企画です。
フォーカスパーソン
やまざき たかゆき(Takayuki Yamazaki)
pdc_designworks代表
ZENAIM KEYBOARD PRODUCT DESIGNER
1972年長野県上田市生まれ。元Honda技術研究所デザイナー。Ape・zoomer・GROMなどヒット商品を手がけた経験を活かし2012年、pdc_designworksを設立。幅広い視野と、多様な趣味を活用しカーデザインを軸とした工業デザインだけでなくファッション、モデル、DJ、コンサルタント、雑誌連載、企業、学生へのデザイン教育活動など「人々を笑顔に」をテーマに活動を行う。
最大の特徴は「フローティングデザイン」
ZENAIM KEYBOARDのプロダクトデザインにおける一番の特徴はなんといっても「フローティングデザイン」です。最初にこのプロジェクトのお話をいただいた時、正直「キーボードのデザインなんて、もうなるようにしかならないだろう...。」と思うところがあり、非常に悩みました。
装飾的なデザインをほどこし、他製品と差をつけて”ZENAIMらしさ”を出していくというのは、このブランドのコンセプトには合わないのではないかと。であれば、要素をそぎ落としていく方向にいくしかない、というところでたどり着いたのが、僕が名付けた「フローティングデザイン」というキーボードとパネルだけが少し浮いて見えるようなデザインでした。
採用した理由としては様々ありますが、最小限の機能的な部分=使用する部分だけを主張し、あとは脇役に徹することによって、より研ぎ澄まされたソリッドな印象が出せるのではないだろうか?ということで、この形に着地しました。
デザインの着想は、武士がたずさえる「日本刀」
「フローティングデザイン」を具現化するために試行錯誤を繰り返しました。「MADE IN JAPAN」のプロダクトである点、そしてブランド名にあるZENからインスピレーションを受けた「禅」、そしてチーム関係者みんなでコンセプトを詰めていく中で、ゲームの世界観に、「柔道」や「剣道」といった日本ならではの「〇〇道」といった考え方を取り込むことはできないかと。そこでベタな言い方ではありますが「武士道」というコンセプトを取り込んだモノというのが、自分の中ではひらめいたところでした。プレイヤーの皆さんがMADE IN JAPANのキーボードを持ち、武士のような気持ちで日本人の誇りを持って、いざ戦場に挑んでいただけるように、と考えたんです。
ではその抽象的な概念をどのように落とし込もうか?概念を具体的なモノとして皆さんにお伝えしていくために、皆さんが認識している既存のモノになぞらえて表現をしていく必要があります。そこで、僕の中でパッと浮かんだのが「日本刀」だったんです。その凛とした佇まい、目的に特化した形状、さらに持ち主のアイデンティティを表現するほんの小さな装飾というところで、今回のキーボードの思想、そしてZENAIMのブランドコンセプトにフィットしているのではないか、というところでデザインが組み上がっていきました。
特にポイントになるのは、フローティングデザインを象徴するトップパネルですね。キーボード全体の印象を支えるトップパネルを薄く、かつエッジを尖らせることによって、パキッとしたモノが浮いて見え、それがキーを支えるメカニズムとして表現できていれば、十分に他のキーボードと違って見えるだろうし、独特のオーラを放つことができると考えました。
もう一つは、設計チームのちょっと狂気じみた開発への情熱を「秘める」という形で、あえてシンプルで凛とした「静寂」を感じる佇まいに落とし込んだことです。デスクに置いても賑やかしく無く、さらにライティングしても、しとやかな表現になるようにとどめました。僕の中でのゲーミングギアの世界というのは、「きらびやか」「ネオン」「とても刺激的」「高揚する」「エナジードリンクもがぶがぶ飲んじゃう」といった印象なのですが、ともすればZENAIMは煎茶をたて、1杯飲んで心を落ち着かせてから「さて。」と戦いに挑むようなオーラが出せれば、ZENAIMの持つ本当のポテンシャルが表現できるのではないか。そういった経緯があり、この形に落ち着きました。
プレイヤーの相棒になれるように。
デザイナーとしての考えではありますが、今回のキーボードは「あくまでも主役ではなく、皆さん自身を引き立てるため、あとは皆さんを戦場で勝たせるための相棒」だという風に考えています。
ですから、ぜひとも末永くかわいがっていただきたいです。日本刀も定期的に白いポンポンで油取りをして手入れをするように、ZENAIM KEYBOARDもぜひお手入れまで楽しんでいただければと思います。今後、メンテナンスやスイッチの交換などアフターケアも充実していきますので、皆様の相棒として戦場にどんどん連れて行ってもらえればと思います。